なぜ勃起にはリラックスが必要なのか

まずは、勃起のしくみについてご存知ない方もいらしゃるかもしれませんので説明してみます。

ここでは「なぜリラックスが必要なのか」を理解するための説明と割り切って、できるだけ簡素化してみます。

かなり雑な説明になると思いますので、正確な情報はどうぞググってみてくださいね。

さて、ペニスが勃起するのは、ペニス内の「海綿体」に血液が流れ込むからだ、というのはなんとなくご存知かもしれません。

もう少し詳しく説明してみますね。

海綿体の中には「陰茎深動脈」が走っています。

「陰茎深動脈」から「らせん動脈」という細い血管に枝分かれします。

「らせん動脈」は海綿体内の空洞部分に繋がっています。

「らせん動脈」は普段「平滑筋」によって締めつけられていて、平常時にペニスに栄養を与えられる程度の少量の血液しか流れません。

海綿体内に流れた血液は「陰茎背静脈」から出ていくので海綿体内に留まりません。

だから、平常時のペニスはふにゃふにゃなんです。

で、

1.エロい目にあう。またはエロいことをする。

2.脳に性的な刺激が届く

3.神経伝達が脊髄を通って陰茎神経に届く

4.ペニスへの物理的刺激と性的刺激の継続

5.様々な神経伝達物質が神経終末部で放出される

6.それらが海綿体組織に届く

7.「平滑筋」が緩む

8.「陰茎深動脈」からの血液が「らせん動脈」(普段は入り口を「平滑筋」に締められている)から海綿体空洞に血液がドバドバ入る

9.海綿体が膨れたことで血液の出口である「陰茎背静脈」が押しつぶされて塞がる。

10.ちんこビクンビクン状態完成

11.射精により勃起は終わる

12.賢者タイム

エロっ!から賢者タイムまでの流れは以上です。

さて、勃起にはなぜリラックス状態が必要なのか。

みなさんの中には「自律神経」という言葉を聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。

「自律神経」はざっくりいうと、私たちの意思とは関係なく仕事している神経で、内臓を動かして血液を循環させたり消化したり発汗したり、といったことのために働いています。

「自律神経」には「交感神経」系と「副交感神経」系があります。

ものすごく乱暴に言うと「交感神経」は戦闘態勢のときに優位になる神経系統で、「副交感神経」はリラックスしているときに優位になる神経系統です。

私たちの心身は、このふたつがバランスよくスイッチングすることで健康を保つことができます。

また前置きが長くなりました。

実は、先述の1.~10.の過程は「副交感神経」系統の仕事なんです。

最中はハアハアしてるんだから「交感神経」系統が働いてんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そういうものではありません。

エロい刺激により、仙髄(骨盤後ろにある下向き三角の骨の中)にある勃起中枢が興奮し、「骨盤神経」を介して平滑筋を弛緩させるのですが、「骨盤神経」ってのが「副交感神経」に属していたりするんです。

それはさておき、つまりリラックスした状態でないと、「1.」が発生しても「2.」以降がうまく作動しないんです。

勃起に大切な血液は、筋力や努力ではなく「平滑筋脈」の弛緩こそが大切です。

そのため、リラクゼーションは強靭で長持ちする勃起には欠かせない要素なのです。

と、ここまで勃起のしくみについて書いてきましたが、ことリンガムマッサージにおいては、その最中の勃起は必須ではないとされています。

理由を「リンガムマッサージ」の著者は以下のように記述しています。

「男性の性欲は勃起している場合の方が強いのに対し、勃起していない状態でリンガムマッサージを受けた場合は、同じような性欲ではなくても、スピリチュアルな体験までしてしまうような、非常に快感のある感性を持っている可能性があることにも言及しておきましょう。そのため、勃起しているかしていないかは、リンガムマッサージの「成功・失敗」の証明にはなりません。どちらも愛され、歓迎されることができます。」


■豆知識1

射精は「交感神経」の仕事ですが、これは、「副交感神経」が優位の状態から、ある時点で突然「交感神経」が優位にスイッチングされて「うっ」となります。

■豆知識2

7.で登場する「平滑筋」(こいつが緩むことで海綿体に血がドバドバ送られる)の細胞内には、弛緩に必要な「cGMP」という物質を分解してしまう酵素が存在します。
酵素の名前は「ホスホジエステラーゼ5型」です。

せっかく掘り進めた穴の上から土をかけていくような働きをするものをなんで自ら生成しちゃうのか。

舌打ちしたくなる存在ですが、理由はあるんです。

コトが済んだのに勃起が継続するのは、ちんこのためにも本人の社会生活のためにもよくありません。

なので、脳からの性的刺激がなくなったときに平常態勢に戻すために必要な酵素なんです。

さて、EDの多くは、「cGMP」の生産量が足りないか、「ホスホジエステラーゼ5型」の分泌量が多いために生じています。

この水かけ野郎「ホスホジエステラーゼ5型」の働きを阻害する作用を持つのがバイアグラなどのED治療薬です。


参考図書:Lingam-Massage (著) Jürgen Becker, Michaela Riedl

人体の正常構造と機能 Ⅵ生殖器」日本医事新報社(著)年森清隆

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