元々は異なる行為だったオナニーとマスターベーション

ペニスの文化史」には「マスターベーション」について書かれた節がありましたので紹介させていただきます。

オナニーとマスターベーションは元々は異なる行為である。

オナニーは、旧約聖書において、死んだ兄の嫁との間に子どもをつくるのが嫌で膣外射精をして妊娠を回避していたオナンという男の名前からきている。
一方マスターベーションの語源には定説がない。
manus(手)とsturpare(穢す)から来ているのだという説と、mas(男性生殖器)とturbation(興奮)からきているという説がある。

実際のところオナンがやったのは「地に洩らした」、つまり膣外射精なので、もともと「オナニズム」とは「膣外射精」と同義語であった。
これが、生殖と無関係の射精として拡大解釈されてマスターベーションの意味に転用されていった。
教会は、聖書のこの記述によりマスターベーションを禁じ、生殖以外の目的で射精したりセックスすることを罪であるとした。

オナニーってのはなんだか罪悪感とセットになっている言葉ですね。
マスターベーションの方は2つ説がありますが、ジャッジメントを含んでいない後者のmas(男性生殖器)とturbation(興奮)の説を採用しておきたいです。
でもやっぱり言葉の響きとしてはオナニーの方がなんだか湿度が高い気がするので私は今後もオナニーって積極的に言っていきたいです。
どうでもいい決意表明なので先に進めます。

18世紀にベッカーズという医師(偽医師とも言われている)による「オナニア」が出版された。
この本は膣外射精としてのオナニズムについて書いたのではなく、マスターベーション行為である自瀆(Self pollution)について書いたものであった。
なので本来ならば「マスターベーション」と表示するべきであった。
この本が、膣外射精であるオナニズムとマスターベーションが混同されるきっかけとなった。

1760年、フランスで「オナニズム-マスターベーションによって生ずる病気についての医学論文-」が出版された。
著者のサミュエル医師は、快楽のための性を悪とする神学的な道徳を、医学によって「実証」しようとした。
19世紀初めまでこの書が、マスターベーションを「性的な病気である」とする論拠とされていた。

なぜ当時、科学者であるはずの医師たちが、マスターベーションは害悪であるなんて非科学的なことを主張したのでしょうか。
それについては、COTENラジオという歴史番組の「性の歴史」の回が参考になりました。
番組によると、そもそも当時医師になれるような身分の人は、社会的に上部の階層に所属し、キリスト教的モラルを守るような「徳の高い」「育ちの良い」人物であることが多かったためではないか、とのことでした。

マスターベーションは「狂気」や「健康障害」を引き起こすとして、医師たちは貞操帯や、就寝中に勃起するとペニスに刺さって萎えさせるための内側に尖った突起ついたペニスリング等、様々なマスターベーション予防法を考案した。

マスターベーション防止のため、性欲を抑える食品も考案された。
そのひとつが、ケロッグ博士が考案した「ケロッグ・コーンフレーク」。

1966年、アメリカの研究者マスターズとジョンソンがマスターべーションは「マスターベーションが精神病の原因となると実証された医学的証拠はなにひとつない」として、マスターベーションの利点を主張した。

現在では、マスターベーションは将来の性意識を構築するのに役立つものであるという点で性科学者の意見は一致している。
また、マスターベーションで使用される性的な想像や妄想も実際の性交時に快楽を生み出すためには重要なスパイスであると指摘されている。

1966年より後に生まれてきて本当によかった。
心から思います

参考図書;ペニスの文化史  Marc Bonnard (原名), Michel Schouman (原名), 藤田 真利子 (翻訳)

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました