前回、「勃起には自律神経の副交感神経(リラックス)優位の状態が必要なのに射精は自律神経の交感神経(興奮)が優位になって起こるのってなんか矛盾してないか」について書きましたが、「性的興奮が頂点に達すると、交感神経が優位になり、射精が引き起こされる。」とありました。
それでは副交感神経優位だったのが交感神経が急激に優位になる、つまり身体が「今!ここ!」と認識する閾値(生体の感覚に興奮を生じさせるために必要な刺激の最小値)は一体なんなのか、について調べました。
射精の直前に交感神経が急激に優位になるのは、体が「射精の準備が整った」と判断するためです。射精を引き起こすための「閾値」は、身体的な感覚と神経系が連携して決定されます。この閾値に関する具体的な要素を以下に説明します。
1. 射精に至る感覚の変化と「ポイント・オブ・ノーリターン」
射精には、**「ポイント・オブ・ノーリターン」**と呼ばれる重要な瞬間があります。この瞬間を超えると、射精のプロセスが自動的に進行し、身体が射精を止められなくなります。身体が「その瞬間である」と認識するための閾値には、以下の要素が関わっています。
1.1 神経系の信号と筋肉の収縮
射精の直前、陰茎への性的刺激が十分に強く、かつ一定時間継続されると、交感神経が次のプロセスを引き起こします:
- 精管や前立腺の平滑筋が強く収縮し、精液を射精管に送り出すための準備が整います。
- 陰茎の根元や会陰部の筋肉(特に球海綿体筋や坐骨海綿体筋)が断続的に収縮し、射精のための圧力が高まります。
これらの筋肉の収縮が体内で感じられると、射精は避けられない状態に達します。
1.2 精液が射精管に到達する瞬間
射精の**最初の段階(エミッション)では、精液が精管から射精管に送り出されます。ここで身体が射精の準備を完了したと認識し、射精反射が不可逆的に進行します。この段階で交感神経が強く働き、「射精の準備完了」**という信号を脳に送ります。
2. 感覚的な兆候:射精直前の身体のサイン
射精が避けられない状態に至ると、身体にはいくつかの感覚的な兆候が現れます。これらは、射精の閾値に達したことを身体が認識しているサインです。
2.1 会陰部や陰茎根元の圧力感
射精の直前には、会陰部(肛門と睾丸の間)や陰茎の根元で、強い圧力や収縮感を感じます。この圧力感が強くなり、繰り返し感じられることで、射精が間近であることを示します。
2.2 陰茎内部の脈打つ感覚
射精直前には、陰茎の内部で脈打つような感覚が高まります。この感覚は、交感神経が優位になり、射精反射の準備が整ったことを示します。この脈打つ感覚が射精の直前に特徴的に現れます。
2.3 急激な快感のピーク
射精直前の感覚として、性的快感が急激に高まり、圧倒的な快感が一瞬にして頂点に達します。このピークに達すると、射精を止めることがほぼ不可能になります。
3. 射精の自律神経的トリガー:閾値に達するまでのメカニズム
3.1 性的刺激の強度と持続時間
射精を引き起こすためには、性的刺激が一定の強度を超え、持続的に与えられる必要があります。性的刺激が強く長く続くと、交感神経が徐々に活性化し、最終的に射精反射が引き起こされます。
- 刺激が断続的で弱い場合、射精の閾値に達するのが難しく、遅漏の原因になります。
- 強い刺激や感度の高い部分への集中した刺激が射精を早め、閾値を早く超えることができます。
3.2 交感神経と副交感神経の切り替え
射精の直前には、副交感神経から交感神経への切り替えが急激に起こります。交感神経が完全に優位になった瞬間が、射精の閾値に達した「ポイント・オブ・ノーリターン」です。この瞬間からは、射精が自律的に進行し、意識的に止めることができません。
4. 心理的要因の影響
射精の閾値は、身体的な刺激だけでなく、心理的な興奮状態にも影響されます。
4.1 性的ファンタジーや感情
性的な妄想や感情的な興奮が高まると、射精に至る閾値が下がり、射精しやすくなります。逆に、緊張や不安が強いと、射精に必要な刺激が増え、閾値が上昇します。
4.2 パフォーマンスのプレッシャー
射精が遅れる原因として、過剰なプレッシャーや不安が挙げられます。これが射精の閾値に到達するのを妨げる要因となることがあります。リラックスしていることが重要です。
まとめ
射精の直前に交感神経が優位になるのは、身体が「ポイント・オブ・ノーリターン」に達したときです。この閾値を具体的に言えば、以下のプロセスが鍵となります:
- 精液が射精管に到達し、筋肉が収縮して射精の準備が整う。
- 会陰部や陰茎内部の圧力感や脈打つ感覚、急激な快感のピークが感じられる。
- 交感神経が完全に優位になり、射精が不可避な状態になる。
この一連のプロセスは身体と神経の連携によって自然に起こり、心理的・身体的要因に大きく影響されます。

「ポイント・オブ・ノーリターン」という言葉が出てきました。この単語を知らなくても、「ああもうすでに止められない」という感覚はオナニーやセックスを経験した全人類が身に覚えのある感覚だと思います。「やべえ、やべえ」を経て「イク!」となる流れの「イク!」の部分ですね。
「イク!」は精液が射精管に到達し交感神経が完全に優位になり、射精が不可避な状態になる瞬間のことだということですが、「やべえ、やべえ」のときってまだ頑張れば射精を我慢できますよね。このときにはまだ精液が射精管に到達しておらず、副交感神経がまだ優位の状態なわけです。
にもかかわらず「ああ、そろそろイキそう」で「やべえ、やべえ」と射精予知能力を私達はそなえています。
これはいったいどういうことなのか。
次回はそれについて調べてみようと思います。